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春の日差しに悲しみを押し付けて、私は今日も生き急いでいる。
バイトなんて行きたくもないのに、どうして気付けば電車に乗っているのだろう。
私一人くらい休んでも何も変わらないのではないかと、私の中の悪魔が囁く。
表参道駅は人が多いから嫌い
奇跡的に座れた銀座線の2号車の中で夢を見た
夢の中の私の手首や太ももには傷跡がなかった。そんなこと有り得ないのにね
現実世界の私は、この手首の傷跡を見られまいと、この心を読まれまいと、必死なのだ。
ああ。今日もバイト先に着いてしまった。
気を利かせて私に話しかけてくれる皆が怖い。作り笑顔は続かない。普通のフリは疲れる。私はあなた達が思っているような人間じゃないのよ。悪い意味でね。
目を見て話す方法を忘れた、冗談の言い方を忘れた。
ふざけ合う皆を私だけがすまし顔で見ている。カッコつけてるわけじゃないの、どうしたらいいか分からないだけ。
帰りに宝くじを買って帰ろう
当たったらすぐにでも内定を辞退して、バイトもやめよう。
笑ってもいいよ、私は本気だから