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一日中稼働させていたクーラーを久しぶりに切って寝た夜。
川のせせらぎ、虫の鳴き声、鴨が水を弾く音、心地よい風、もうすっかり秋だ。
日々YouTubeを見ながら亡くなった彼のことを思い出して物思いにふけたり、今をときめくイケメン俳優と呼ばれる彼等を見て心をときめかせたり、明日はどんなお弁当にしよう夜ご飯は何にしようなんて、携帯漫画を片手に考えたりしている。
要は私は満たされてしまっているということだ。
もう、あの頃のような言葉を紡ぐことができない。もう、あの頃のような心の中の黒い塊に振り回される私ではない。
それは成長と言っていいのだろうか。
ただ、腐った人間達や、大都会東京渋谷から離れて暮らすことにより平和な環境を手に入れたからなのだろうか。
だとすれば、私はただ逃げただけで、強くなることを諦めたということなのだろうか。
この安定は一時的なものなのだろうか。
正直そんなことはどうでもいい。
今の私は穏やかすぎるくらいに穏やかだ。
それでいいじゃないか。
都会のワンルーム、締め切ったカーテン、机の上のカップ麺、ストロング缶、錆びたカッター、血痕、増える長袖、いつのまにか白くなった肌。
こんな私だったはずなのに、
今わたしは、夏が過ぎ去ることを惜しんでいるのだ。